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整備士くずれの日々徒然

【アセットコルサ】tyres.iniパラメータ解説 諸元・挙動篇【the ASSETTO CORSA MODDING MANUAL読解】


前回のsuspensions.iniの解説に続いて、今回はtyres.iniの各パラメーターの解説というか、moddingマニュアルの和訳をしていきたいと思います。

 

先に断っておきますが、タイヤ作りはかなり難しいです。特に滑ってからの挙動を再現するのは非常に難しいと思います。

マニュアルを読んでほとんどのパラメータの意味を理解したはずの筆者も、まだ思うようなタイヤを作る事ができません。

それでも何が書いてあるのか、意味することは何なのかわかるようになったほうが良いかな?ということで解説と実際に自分が数値をいじった時の感触を書いていきたいと思います。

また、tyres.iniのパラメータはかなりの数になり、記事が長くなりすぎるので諸元・挙動篇と温度特性篇に分けて書きたいと思います。

今回は諸元・挙動篇です

 

※マニュアルでは明確に説明されておらず、個人的な見解や実際に調整した際の変化などは青字にしてあります。

※当記事について執筆後、国内の有識者の方より「翻訳元の記事を制作した方が性能実験を検証していないまま書いてしまっているため、内容に誤りが多く注意が必要」とのご意見をいただきました。

当方ではどの部分が誤りなのかは不明なので、参考までにご覧下さい。

 

 

tyres.ini各パラメーター

 

VERSION=

物理エンジンがロードするタイヤコードのバージョン。推奨される入力は10(最新のもの)らしい。

tyres.iniにはゲームクラッシュ回避のために使われていない(使うつもりのない)パラメータのデータも入力されている

バージョンによって読み込むパラメータ、読み込まないパラメータがあり、タイヤ特性の出力に違いがでるので注意。 

 

[COMPOUND_DEFAULT]

INDEX=

タイヤのセットが何パターンがある場合、デフォルトでセットアップにロードされるタイヤを番号で指定できる。

 

[VIRTUALKM]

USE_LOAD=

タイヤの摩耗計算で距離で減る(0)か荷重で減る(1)かを設定できる。オススメは1らしい。

 

[FRONT](REAR)

下記に定義するタイヤの前後区分

 

NAME=

ディスプレイに表示されるタイヤの名前

 

SHORT_NAME=

ゲーム中のリーダボードに表示されるタイヤの短縮名

 

WIDTH=

タイヤ幅。見た目やパターン幅が変わったりするが、ここの数値を変えてもタイヤグリップ的には一切変化しない

 

RADIUS=

タイヤ半径(m)タイヤグリップやフィーリングに影響はないが、重心高の演算に使用される模様。

 

RIM_RADIUS=

リム半径(m)

実際のホイールサイズより1インチ大きいサイズをメートルで入力するらしい。

 

ANGULAR_INERTIA=

タイヤ、ホイール、ブレーキなど回転部品の慣性(kg·m^2)

スリップやロックの早さに影響する

 

DAMP=

タイヤのもつ減衰特性(N/m/s)。一般的には200〜1400あたりの数値になるらしい。

 

RATE=

タイヤのバネレート(N/m)。

200000~300000あたりに設定されていることが多い

 

DY(X)0(1)=

旧バージョン(4以前)でタイヤグリップを表現するパラメータだったらしい。

ゲームの読み込みに必要。

 

WEAR_CURVE=

タイヤの摩耗特性を別のlutファイルで定義したものを呼び出すステータス。

 

SPEED_SENSITIVITY=

速度感度。スリップ速度がタイヤグリップに及ぼす影響を調整できる。

一般的には0.002辺りになるらしい。

 

RELAXATION_LENGTH=

タイヤの応答ラグを設定する項目。具体的にはグリップの63%に到達するまでの時間を調整するらしい。

たわみの設定と思ってもいい部分があり、数値を大きくしていくとぽにぽにとした操作感になる

一般的には0.07〜0.12の辺りで落ち着くらしい。

 

ROLLING_RESISTANCE_0=

タイヤの転がり抵抗値。詳細は不明だが、グリップや燃費などに影響する

 

ROLLING_RESISTANCE_1=

転がり抵抗値の乗数。速度による変位度を設定できる。

 

ROLLING_RESISTANCE_SLIP=

スリップ時の転がり抵抗値。Kunos純正値は実挙動の20倍ほどの数値が入っているらしく、実際は800あたりらしい。

 

FLEX=

旧バージョンでタイヤのたわみを表現していたパラメータ。最新のバージョンでは使用されていないが、読み込みに必要。

 

CAMBER_GAIN=

キャンバーによって発生するスリップアングルの付与値。通常は0に設定されているが、一般的には0.1らしい。

 

DCAMBER_0(1)=

キャンバー感度というものを設定する演算指数。マニュアルにはキャンバー感度の計算式が載っていたが、そもそもキャンバー感度というものが何を意味しているのかは不明。

 

FRICTION_LIMIT_ANGLE=

後述のFZ0という指定荷重をかけたときに最大グリップが発生するスリップアングル値。

およそ8〜10度のあたりに設定されていることが多いが、FZ0の数値との兼ね合いが重要らしい。

 

XMU=

旧バージョンで使用していた転がり抵抗を表現するパラメータ。現在は読み込み用。

 

 

PRESSURE_STATIC=

接地、冷間時における空気圧(psi )

 

 

PRESSURE_SPRING_GAIN=

PRESSUREIDEAL(後述)という基準空気圧から、エア圧が1psi上昇した時に付与されるバネレート(N/m)を入力する。

 

PRESSURE_FLEX_GAIN=

PRESSUREIDEALからエア圧の上昇によってFLEXGAIN(後述)がどう変化するかを設定する。

FLEXGAINはある意味でたわみの表現に近いところがあるので、マニュアル曰く通常はマイナス数値が入り、たわみを減らす方向になるらしい。

 

PRESSURE_RR_GAIN=

PRESSUREIDEALからエア圧の上昇でRRがどう変わるかを設定する。

なお、RRが何なのかの説明はないが、おそらくROLLING_RESISTANCEの略かと思われる。

 

PRESSURE_D_GAIN=

PRESSUREIDEALからエア圧の上昇でDがどう変わるかを設定する。

なお、Dが何なのかの説明はないが、おそらくD_CAMBERの略と思われる。

 

PRESSURE_IDEAL=

エア圧によって影響をうけるパラメータの基準エア圧(psi)

 

FZ0=

他パラメータをもとにタイヤのステータスを構築する際に基準となる負荷指数。

タイヤのグリップ特性の演算はほとんどが曲線でできており、一定の範囲でしか妥当な演算ができない。

そなため実荷重とかけ離れすぎた数値になっていると正確な演算ができなくなるので、妥当な数値を入力する必要がある。

一般的には3000〜6000(N)の模様。

 

LS_EXPX(Y)=

タイヤの負荷によるグリップ特性を演算するための指数。

計算式上では乗数値になるので、負荷に対して二次曲線的にグリップ感が変化する

Xが縦グリップでYが横グリップになる。

 

DX(Y)_REF=

タイヤの負荷によるグリップ特性を演算する指数。

計算式上では積算値になり、タイヤの絶対的なグリップを決める数値と言っても良いと思われる。

Xが縦グリップ、Yが横グリップになる。

 

DX(Y)_CURVE=

負荷に対してのタイヤ特性をlut形式で表現するときに使用する。

lut形式は以下の様に表現する。

0|1.275
3000|1.10
6000|0.95 

 

DCAMBER_LUT=

発生したグリップに対してのキャンバー感度をlut形式で指定できる。

lur形式は以下の様に表現する。

-1|1.04
0|1
1|0.975

 

DCAMBER_LUT_SMOOTH=

DCAMBER_LUTを指定した際に、lutで指定した数値間を平坦化する時に1にする。

しないときは0。

 

COMBINED_FACTOR=

タイヤの摩擦円を表現するパラメータ。

2.0で円となり、2を超えると摩擦円の角が立ち、斜め方向のグリップが強くなる。

強くしすぎるとスリップしてからアクセルを踏んだ方がグリップするという不思議なタイヤになってしまう。また、数値を上げすぎるとゲームがクラッシュする。

実際のタイヤは2.1~2.3あたりの特性になるらしい。

 

 

COMBINED_FACTOR_1=

摩擦円の変移数値。

タイヤ負荷なのか、空気圧なのか、速度なのか、何をもとにしてCOMBINED_FACTORを変移させるのかはマニュアルには記載されていない。

 

FLEX_GAIN=

タイヤのねじれによるスリップアングルの増加を指定するパラメータ。

数値が大きいほど舵角とリムの角度に対してタイヤのねじれが大きくなり、スリップアングルが増加する。

およそFZ0の2倍の負荷の時にスリップアングルがどれだけ増加するかを設定するものらしい。

ほとんどのラジアルタイヤはおそらく0.0700~0.1000あたりになる・・・らしい。

 

FALLOFF_LEVEL=

スリップ率によるピークグリップからのグリップ低下率を設定する。

1なら100%で落ちが無くなり、0.8ならピークグリップの80%まで低下する様になる。

 

FALLOFF_SPEED=

スリップ率によるピークグリップからFALLOFF_LEVELで設定したグリップまで落ちる速度を調整する。1は直線的に落ち、2以降は曲線的に落ち、数値が上がるほど落ち方が急になる。2か3あたりを使うと良いらしいが、Modによっては4や8になっているものもある。

 

CX_MULT=

縦方向の負荷に対してのスリップ剛性を設定する。

1の場合は横と同じ剛性、1より低くなると縦方向の剛性が下がり、スリップしやすくなる。

1を超えると横方向よりも強くなる。

参考数値は存在しないらしいが、1より低くなるということは通常ありえないらしい。

最終的な車の挙動に大きな影響を与えるパラメータ…らしい。

 

RADIUS_ANGULAR_K=

タイヤの動的半径を演算する際の補正係数。

タイヤの秒あたりの角速度に対してmm補正をかけるか設定する。

一般的なレーシングタイヤで0.01(mm)らしい。

 

BRAKE_DX_MOD=

縦グリップは本来減速側の方がグリップが高いらしく、ブレーキ時の縦グリップを補正するためのパラメータ。

正の数値ならその分ブレーキ時のグリップが増加し、負の値の場合はグリップが低下する。

マニュアルでは実際のタイヤは-0.02らしいと前述と真逆の事を言っているが、タイヤ個々の特性によるところが大きいらしく、現実的な数値は不明。

 

おわりに

複雑かつ非常に多くのパラメータをもつtyres.iniですが、意外と死にデータが多く、最新バージョンで使用していて調整するパラメータは案外少ない印象です。

とはいえ前述の通り自分自身もまだ納得のいく挙動を再現できていないので、研究の余地は余分にある分野です。

本記事を参考により良いタイヤmodを制作してくれる有志が国内に現れてくれることを願います。

さらに詳しく知りたければ本家様のマニュアルをダウンロードしてみてください。

assettocorsathemanual.blogspot.com

 

 

 

 

 

 

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