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整備士くずれの日々徒然

耐荷重からスプリングを選定して車高調を組み直す【車高調セッティング】

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「レートを下げると調子が良いらしいから下げてみようかな?」

「底付きしてるような感覚があるんだけどバネレート上げた方がいいの?」

車高調は車高調整機能のほかにスプリングを変更したり、減衰力を調整する機能が備わっているものが多くあります。

この記事は「スプリングレート変更してみようかな?」と考えている方にスプリングの耐荷重からスプリングを選定して、自分の用途に合った車高調をつくるリセッティング方法を提案する記事です。かなり長い記事ですが、ご興味のある方は参考にどうぞ。
※この記事でサンプルとして挙げる車両は筆者の自家用のBRZです。

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部品を購入する前にも手間をかけて調べることがありますし、交換後もチェックや調整の為に詰めの作業が必要になります。

手間を嫌がって、とりあえず部品を買って交換する・・・といった作業では思惑と違ったものが出来上がることがほとんどです。

せっかくお金をかけてリセッティングするのですし、するべきことをしっかり把握して、必要なものを買ってリセッティングしましょう。

②車のバネ上重量を把握する

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車に興味のある方なら聞いたことがある単語かもしれません。今回のテーマの「耐荷重」のカギになる数値です。

ここでいうバネ上重量は1輪辺りのバネ上重量です。

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こういった無負荷の状態のスプリングの全長を測っておきます。

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その後接地状態でのスプリングの全長を測っておきます。
ジャッキアップして4輪ともタイヤを外し、まずは全長測定→ウマをハブにかけてジャッキダウンして再度全長測定という流れで作業すれば一度に2回測定できて楽です。

全長を測る=ストローク量を知りたいだけなので、スプリングの全長でなくともストローク量が分かれば測定個所はどこでも良いです。

接地前の長さー接地後の長さでストローク量が計算できると思います。

そのストローク量に使っているスプリングのレートを掛け算すればバネ上荷重というものがある程度知ることができます。

ここでは今後1G荷重と呼ぶことにします。
例:BRZのリアで自然長180mmでレート8kのものがついている場合

  接地前180mm-接地後155mm=25mm(接地までのストローク)

  ストローク25mm×バネレート8k=200kg 

  リヤの単輪バネ上はおよそ200kg程度

※荷物を積んでいない状態で計測してください。

※燃料は満タンが望ましいです(スポーツ走行時で一番重い状態)

※スプリングのプリロードはかかっていないことが条件です。(2,3mmは誤差です)また、Swift製のスプリングは縮み始めのレートの立ち上がりが低いエリアが広いので、この手法だと測定結果に大きく違いが出てしまうことがあります。

実際にやってみると左右差がでたりしますが、重く出た方の数値を使うとサスペンション破損のリスクを減らせるので、重い方の数値をチョイスしてください。

③自分の車高調の仕様を知る

バネ上の1G荷重が分かったら次は自分の車高調の仕様を確認します。

車高調を取り外し、分解します。

分解はスプリングを取り出してダンパーの有効ストロークとバンプラバー長が分かるレベルで良いです。

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こんな感じです。

ダンパーの有効ストロークからバンプラバーが占める長さをひいて、バンプタッチするまでのストローク量も把握しておいてください。

例:有効ストローク75mm-バンプラバー長25mm=バンプタッチまでは50mm

では車高調がもっている耐荷重性能を考えてみましょう。

バンプタッチ後のストロークは破損防止用として考え、バンプタッチまでのストロークで考えます。

ストロークにスプリングレートをかけた数字が、その車高調が持つ耐荷重性能になります。
例:ストローク50mm×レート8k=400kg

④必要な耐荷重を考える

上記2つができると自分の車高調がバネ上重量に対してどれくらいの耐荷重の余力をもっているかがわかります。

(サンプルでいえば接地後からは200kgの耐荷重の余力が残っているということです。)

耐荷重がどれほどあればよいのか?というのが今回の記事のテーマ。これが人と使い方と走る環境によって違ってきます。

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車は走行中に加減速や旋回で前後左右にGが発生しますが、発生するGは状況によって違います。

街乗り程度であれば幹線道路を良い速度で走っても0.5G程度。

ワインディングを走る程度で0.7G程度。

サーキットでのスポーツ走行で0.8G程度。

タイムアタック車両になると1G近く発生するものもあります。

接地から0.5Gかかればサスペンションにかかる荷重はトータルで1.5Gです。

(サンプルで考えてみれば余力は200kg=1G程あるのでこの車高調はサーキット向けと言えるでしょう。)

データロガーやGセンサー付きのドラレコ、OBD接続のマルチモニターなどで自分の走行時の発生Gが分かる方は車高調との荷重容量と比較してみてください。
特にデータのない場合は自分が走る中で一番負荷がかかるシチュエーションがどこなのか考えてみてください。

車高調の耐荷重容量と自分の仕様環境で発生する荷重に大きな差が出る様ならリセッティングする価値はあるでしょう。

ここまで測定と計算をされた方ならお気づきの方もいらっしゃると思いますが、大手メーカーの車高調はなかなか考えて作ってあるな・・・ということがわかるかと思います。

リセッティングはそこから自分のスタイルに合わせるためにお金とコストをかける細かい詰めです。かけ離れたスプリングレートに変更するというのも限度があります。

費用対効果としては良くはない部類に入ると思います。

それでもやってみたい!という方は経験にもなるのでぜひチャレンジしてみてください。

⑤目的の耐荷重からスプリングを選ぶ

耐荷重はスプリングレート×ストロークで決まるため、耐荷重を変更するにはこの2つの要素を調整します。自分の使い方に必要な耐荷重が把握できたら、次は要件を満たしたスプリングを探します。

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参照元:https://endless-sport.co.jp/products/suspension/index_Coil.html

画像はエンドレスが取り扱っているX-COILSというスプリングのラインナップ表の一部です。

スプリング内径から自然長、レートと表記がありますが、有効ストロークと最大許容荷重に注目してください。

この一覧の中から、必要なストロークと耐荷重を持ったスプリングをピックアップしていきます。

サンプルを例にあげますが、8kでストローク25mmで耐荷重200kg(1G)となってサーキット寄りになっている現状からストローク25mmで140kg(0.7G)程度の物に変更して、ストリート寄りに仕様変更するとします。

必要な要件としては、ショックの有効ストローク65mm以上のストロークと340kg以上の許容荷重。

画像から選ぶと、自然長178mmのもののレート4~10kの4種類。

ここから、ストローク25mmで荷重140kgに近しくなるものを計算して選別します。

140(kg)/25(mm)=5.6(k)

5.6kのレートというのがラインナップにないので少し余力のある6kをチョイスします。

※6kの場合…6k×25mm=150kg(0.75G)

自分の用途にドンピシャに合うスペックのスプリングというのはなかなかありません。

ひとつ上をつかうか、下をつかうかの選択になるとおもいますが、容量不足はスプリングとショックの破損を招きます。余力を残せるほうのスプリングをチョイスしてください。

また、選別の段階でどうにも今からレート変更できそうもないぞ・・・?と思ったら仕様変更をやめた方が無難なケースがあります。

⑥プリロードを加味して⑤を再検証

⑤で現状より低いスプリングレートになった場合、リバンプストロークでどれくらいストロークするのか一度計算します。

サンプルの場合、6kをチョイスしたので

200kg/6k=33.3333....mmとなります

このままプリロードゼロのままスプリング交換をおこなうとレートが下がった分リバンプストロークが増えてなおかつバンプストロークは減ってしまい、ストローク比も耐荷重設定も全く思惑通りにならなくなるので、増えてしまうリバンプストロークをプリロードをかけて調整します。

サンプルの場合
6kでのリバンプ33mm-8kでのリバンプ25mm=8mmのプリロードをかけて使用する

また必要になったプリロード分だけスプリングに必要な有効ストロークも増えるので、④で選んだスプリングが条件を満たすか再度チェックする必要があります。

サンプルの場合
必要なストローク=ショック全ストローク75mm+プリロード分8mm=83mm

スプリングの有効ストローク87mm

必要分<有効ストロークとなっているのでOK

ここでスプリングの有効ストロークが足りなくなった場合はスプリングの選び直しが必要です。要件を満たすスプリングが無ければ仕様変更不可とし、リセッティングは中止です。

また、仕様変更で現状よりレートアップする場合は現状よりリバンプストロークが減少し、ストローク比率が変わってしまいます。

比率が4:6~5:5におさまるか、バランスが崩れても問題ないようであればかまいませんが、リバンプ不足になった場合は別途ヘルパースプリングやテンダースプリングといったリバンプストロークを確保するものがリセッティングで必要になってきます。

⑦スプリングを調達して車高調に組み込む

ここでようやくスプリング購入です。

通販なりでどこから仕入れても構わないと思います・・・が、公式サイトから購入するとスプリングの公差など細かい情報を問い合わせた場合にサポートしてくれる場合があります。

取り扱い元と直にやりとりできると今後のセッティングで助かる場面もでてくるので、公式から購入するのも選択肢のひとつに入れてみても良いでしょう。
また、手間がかかるのですが分解した際に一度確認して欲しいのが、フルバンプ時に不具合が起きる車高にならないか。

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スプリングとバンプラバーを抜いて、普段走っている時の車高と同じケース長に合わせてタイヤをつけ、ジャッキなどでフルバンプ付近までストロークさせます。

※フルバンプを超えてストロークさせるとショック破損の原因になります。十分注意してください。機材的にできない様であれば無理してしなくても良いです。

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フルバンプ付近で、

タイヤが天着きしていないか?

サスペンションアームがボディフレームに干渉していないか?

ドライブシャフトが抜けそうになったりしていないか?

等々を確認します。

(自分のはオーバーフェンダーになってるので純正フェンダーの切れはしが触れそうになっていました)

もしこれで上記のような不具合を発見した場合は、段差等含めた走行の最大負荷で車両破損が起きるリスクがある車高になっているということです。車高調整をお勧めします。

リセッティングまでするほどこだわっているものなので、走れる車高がベストです。

それでも車高を変更したくない!という方は、ストロークの見直しからになるので③か④あたりからやり直しになります。

⑧試走して微調整

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色々な道を走ってみましょう

作業が終わったら試走します。新品のスプリングを購入した場合は初期へたりがあるスプリングもあるのでしばらく走った後に車高やリバンプストロークが変化していないかチェックし、再度調整します。

スプリングレートが変わると減衰力の再調整も必要になる場合があります。合わせて調整して下さい。

⑦の段階で車高調整が必要になった場合はアライメントが大きくずれている場合があるので、試走完了後にアライメントをチェックすると良いです。

⑨おわりに

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以上が耐荷重からスプリングを選定する車高調リセッティングの流れです。今回は例として低レートの物にスプリング交換という手段を用いましたが、例のひとつであり、結果のひとつでしかありません。

人や物によってはツルシそのままでなんら不足はなかったり、少しの調整だけで十分で部品交換まで必要にならないケースもあります。

ここまで書いておいてなんですが、この記事は万人にリセッティングを推奨し、パーツを買えばよくなりますよ、という目的で書いたものではありません。

必要なければ必要ないで良いのです。いたずらに余計な事へコストと時間を割く必要はありません。

しかしもしリセッティングの必要がないとしても、今回お話の中で挙げた「車両の現状と使い方を比較する」という部分は、自動車をより知り、今後のカーライフに生かすという意味では非常に有益だと思っています。部品は買わずともぜひお試しいただきたいです。

⑩小ネタ

記事中に入れると話が脱線気味になるかな?と思って書かなかった、リセッティングについての小ネタというかTips的なものを少し書いておきます。

  • 人の真似を丸々しない・・・セッティングは人と車、使うパーツそれぞれによって結果が変わります。答えだけを求めるな・・・などと偉そうな事は言いませんが、人から貰った答えと自分で気づいて導きだした答えは大きな違いが必ずあります。納得のいく車づくりをしましょう。

  • ルーチン化できると安定する・・・足回りのセッティングは色々な要素がかかわってくるのでこっちを立てるとあっちが立たない・・・なんてことがままあります。自分のなかでセッティングのルールを作ってルーチン化すると見落としのない作業ができるようになると思います。

  • 最初は純正車高が楽・・・車高調買っておいてなんじゃい!と言われそうですが、ストロークする足をつくる時はまずは純正車高で作ってみると縛りが少なくて作りやすいです。

  • プリロードは悪ではない・・・プリロードは適正にかける分には乗り心地を悪化させたり、足回りの動きを阻害したりはしません。実際BRZの純正足は30mmほどプリロードがかかっていますが、ひどい乗り心地ではありませんよね?そういうことです。

  • レートによる特性変化・・・同荷重でハイレートとローレートどっちが良いの?っていう疑問を持つ方がいるかもしれませんが、どっちも良し悪しあります。ハイレートはレスポンシヴでショートストローク傾向に落ち着くのでロールが少なく、アライメント変化も緩やかになる傾向がありますが、路面追従やグリップ依存の傾向が強まります。ローレートは路面追従や乗り心地で有利ですが、ストロークを確保する必要があり、レスポンスもマイルド(悪く言えばダルい)傾向にあります。

  • バンプラバーも吟味できると幅が広がる・・・サンプルの車高調のバンプラバーは硬質ウレタンで、それ以上ストロークしないバンプラバーでしたが、もう少し軟質なウレタンやゴムのバンプラバーを使うことによって耐荷重管理の幅を拡げ、スプリング選択に余裕が生まれる場合があります。記事では挙げませんでしたが筆者はもっぱら軟質ウレタンを使用しています。

  • スプリングの銘柄の違い・・・今回は例としてエンドレスのX-COILSの表を参考にしましたが、各メーカーから色々なスプリングがでていてどれ使えばいいの?という疑問が出てきそうですが、スプリングマニアから言わせると「同レート同サイズでもフィーリングが異なり、ダンパーとの相性にもよる」との事です。

かなり長い記事になってしまいましたが、いかがでしたでしょうか?多少なりとも誰かの参考になって、今後のカーライフの助けになれば幸いです。

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