中古で買ったが動かないのでなんとかできないか?という相談を受け、ドリフト界隈では有名な車高調(フロントのみ)をお預かりしました。
中身がずっと気になっていたので、機会をいただけてありがたい限りです。
受け取ってすぐに片側が縮みも伸びもしないことを確認。
ダンパーの下部からはオイルらしきものがにじみ出ていました。
倒立なのでアッパー周りにガス室へのアクセスがあるだろうと探った結果、ショックロッドの頭に蝋が塗られており、溶かし落としたら封入口らしきものがみえました。
ボルトをとると奥にエアバルブのムシが入ってます。
ビンゴですね。
意外とエアバルブが使われているものですね…
ガスを抜いたらひとまずストロークするようになったので、オイルが抜けてフリーピストンとロッドがケンカしていたみたいです。
ひとまずケースの歪みが原因による固着ではない様です。
諸々外していよいよダンパー御開帳です。
ダンパーオイルはほとんど残っていませんでした。
オイル自体は廉価車高調より柔らかいオイルが入っている様でした。
粘度じゃなくてピストンとシム組みでちゃんと減衰だすタイプですね。
抜けて底突きさせたのか、樹脂カラーも破損していました。
この破片が噛み込んで固着させていたのかもしれません。
ロッドのシールは2個入っており、片側(外気に近い方)はドロドロに溶けていました。
内側は破片が噛み込んだのかキズが入っており、オイル漏れの原因になった可能性があります。
なにかしらでオイルが漏れて底突きして樹脂カラーが壊れたのか、強い段差などで底突きさせて樹脂カラーを壊してオイルを漏らしたのかは不明ですが、ダンパーとして機能しなくなるレベルに破損が酷いというのは確実です。
金属部品に損傷が少なく、曲がりや打痕は無さそうなのが不幸中の幸いでしょうか。
シムの組みも確認してみました。
ピストン自体はリニア系っぽいです。
バンプ側にスリットシム、リバウンド側にリングシムが組まれていました。
リバウンド側はリングシムでシム組みの一部からプリロードをかけて、疑似的にディグレッシブ特性に仕向けているみたいですね。
シム自体は結構な枚数が常識的に組み込まれてる印象です。
1枚ごとの厚みはブリッツラルグスなどの台湾系より薄め、HKSよりも厚めが多いといったところです。
とはいえ、ピストンのオリフィス面積が廉価品とまるで違うので、シムが薄いから減衰が出てないとも言えません。
ピストン上下で圧力差が出やすいピストンを使いながら、薄めのシムで細かく調整してるって印象です。
一通り見ましたが、自分が分解してきたダンパーの中では一番まともな印象でした。
まあ定価で30万はする車高調なので、それなりになっててくれないと困りますが、ブランドのネームバリューやショップの付き合いだけで売れてる車高調ではないのはわかりました。
凝ったシム組みはともかく、社外ダンパーはこのくらいの諸元を当たり前に持ってて欲しいですね。
それが廉価帯では難しいのかもしれませんが…
再調達と組み込みが謎なピストンリングの割れはなさそうなので、しっかり洗浄してオイルシールを再調達して樹脂部品の復元ができれば使えるようにはなりそうです。
復旧の目処が立ったらこのまま組むか、シム組みを変えて味付けし直すかを持ち主と相談して組み上げます。
直ると良いな…